2009年5月
柏から銀杏へ
前回の校章話でご紹介した旧制の一高と五高。
1949(昭和24)年の新制大学発足にあたり、一高は東京大学と統合して教養学部になり、五高は熊本大学の法文学部と理学部になりました。
新制大学として、やがてどちらの大学マークも「銀杏」のデザインが使われます。
伝統と特色ある様々な旧制前身校が一つに統合して新制大学が発足したという経緯に加え、「尚武」の意匠を含む「柏葉」章では民主平和国家として再出発した時代状況にふさわしくなかったのかもしれません(図1)。
天下に冠たる「銀杏印」
東京大学の「銀杏印」は校章ではなくて、あくまで「大学マーク」だそうです。
銀杏バッチは、1948(昭和23)年に定められ、当時の学生さん達の詰め襟に輝きました。
2004(平成16)年の国立大学法人化を機に、これまでの銀杏デザインに配色アレンジなどを工夫して、あらためて「大学マーク」として定められました。
今や、東大のあれやこれやにプリントされて大活躍です。
「銀杏の都」に学府あり
一方、肥後熊本といえば豪壮華麗な熊本城を思い起こします。
天守閣の近くには築城時に加藤清正が植えたという銀杏(いちょう)の木があり、このことより「銀杏(ぎんなん)城」とも呼ばれます。
これをゆかりにして熊本市の市木は銀杏。熊本市は「銀杏の都」ともいいます。
新制熊本大学の校章(図2)に銀杏が採用されたのは、ごく自然なことだったのかもしれません。
ついでにいえば旧制熊本中学及び現在の県立熊本高等学校も銀杏の校章です。
国立大学法人化にあたりUI活動の一環として、熊本大学でもくまもとの「く」と「K」を図案化し、これを前進飛翔する「矢印」のイメージを託したロゴマークを定めています。
「紫紺」と「うこん(銀杏の色)」が配色されたシャープなロゴです。
「商都大阪」も銀杏がシンボル
さてさて、銀杏がわが街のシンボルというならば、大阪府も同様。
大阪府立大学の校章も大阪府の木「銀杏」がモチーフになっています(図3)。
2005(平成17)年、大阪府立大学(旧)、大阪女子大学、大阪府立看護大学の府立3大学が統合して、大阪府立大学(新)となりました。
マークは3枚の銀杏(府立)が一つになったことをシンボライズしています。
白地の部分を見ていると、大阪市花である桜にも見えてきます。「セレッソ大阪」も桜でしたっけ。
ただし大阪市立大学の校章は桜でも銀杏でもありません。
こちらは商神マーキュリーの杖翼と市章「みをつくし」をアレンジしているのですが、この話はまた後日(第8話)。
国立の大阪大学の校章にも銀杏が使われています。
大阪大学では、戦前より「交差した二枚の銀杏の葉」を校章マークとしていました(図4)。
この「マーク」は、正式な校章ではなかったものの、大学関係者には愛着のあるマークでした。
この校章の「銀杏」をアレンジして、1991(平成3)年の創立60周年時に新しい銀杏マークを制定しています(図5)。
2007(平成19)年には、大阪外国語大学との統合シンボルマークも制定しています。
ところで、街の木といえば、東京都も銀杏です。だから東京都のシンボルマークも「銀杏(?)」。
いえいえ、どうやら東京都の「銀杏マーク」は銀杏にあらずして「T」をデザインしたものだそうな。
どうみても銀杏ですけどね。都内のガードレール(パイプ製)にも、この「Tマーク」が上手に組み込まれているからご確認ください。
この東京都のマークと大阪大学の銀杏マーク、ちょっと似ています。
東京都の正式な「都章」は別にあるのですが、こっちの方は旧制第六高等学校(岡山)と似ているからややこしい。この話も、またの機会にとっておきましょう。
それはそれとして「大学」と「銀杏」の組み合わせは、なぜか「ドンピシャ」なんですよね。
キャンパス風景として、秋はもちろんのこと、新緑の銀杏も実に美しいものです。
さあ、次回は「桜」をテーマにして、校章大学めぐりをいたしましょう。